世襲の悲しみ

 25年間勤務した販売センターは、本社の直営店でもあり、新聞販売所の所長候補の研修センターでもあった。新聞販売所の所長候補には2種類あり、新聞配達員から所長を目指す者と家が新聞販売所で通常65歳で引退となる親の後継者となる者。販売センターの社員所長は直営店を任せられて日々の業務を回しながら、研修センターのコーチとして候補を指導する。

 何不自由なく育った2世研修員、親の躾が良く、初日から何も言うことのない者。先ず朝起きるところからの者・・・などなど、ありながら、研修期間は1日~1か月~1年~3年~5年と様々。

 親元を離れての研修2世社員、いろんな問題を起こす者も・・・宿舎の1DKマンションのベランダ越しに、若い女性の部屋に忍び込み逮捕され、実家の新聞販売所も取引停止となり改廃された者。研修期間は要領よく過ごし数か月で腰痛を発症し、業務遂行不可能となり、自宅での研修から首尾よく後継ぎ。新聞業務は金勘定だけして、サイドビジネスから少女買春で逮捕、即時取引停止。

 ・・・ことごと左様に、世襲には世襲の空しさ悲しさ苦しさはあるとは思う。しかし「志がない」ところに世襲の悲しみがあるのだと思う。